職場インタビュー

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既存のやり方にとらわれない、柔軟な働き方へ

カムコミュニケーションズ株式会社 代表取締役

内橋 良介さん

会社紹介

当社は米粉を使った菓子の製造・販売を行っており、店舗販売商品のほかに企業・自治体向けのOEM(*1)商品を受注生産しています。
自社商品のすべてに庄内産「はえぬき」を使用し、庄内産の卵など地元食材(山形県産を含む)にこだわった商品づくりをしています。
もともとは米菓メーカーの洋菓子事業部として始まった会社で、その後独立しました。
それまでの品質管理や在庫管理等の方法を踏襲していますので衛生管理やオペレーションの体系、労働環境が整っています。

業務は「菓子製造」と「販売や事務など製造以外」の大きく2つに分けられており、業務内容は違っても皆、”チームで動く”という意識を持って働いています。
通販は全体売上の過半数を占め、繁忙期にはその日中に製造から出荷までを一気通貫で行うこともあります。
そのようなときも普段からスタッフ同士のコミュニケーションが取れていて、チームで動く意識を持っているのでスムーズに業務を行うことができ、活躍しやすい職場です。


一般事業主行動計画策定と奨励金交付申請のきっかけ

ほとんどが女性スタッフですので、スタッフの活躍を考えると必然的に“女性の活躍”について考えることになり、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(以下、行動計画)の策定と奨励金の交付申請はごく自然な流れでした。

当社スタッフは子育て中や子育て経験者が多く、私自身も0歳と2歳の育児真っただ中です。
行動計画は“子育て”を一つのキーワードに「育児休業後の職場復帰」や「働きやすい職場環境整備」を軸に策定しました。
行動計画策定・奨励金申請により、会社として女性活躍を真剣に考えているということが社内外にも伝わり、実際にスタッフから「働きやすい」「職場が好き」といった嬉しい声もありました。

実は、過去に育休後の勤務日数を調整して勤務したいというスタッフがおりましたが、当時の雇用条件では対応ができず残念ながら退職となりました。
現在そのような希望はありませんが、よりスタッフに寄り添った柔軟な対応ができるよう、現在新たな制度の準備を進めています。


大阪府出身、東京都在住の内橋さんが酒田で会社を設立した理由

私は新卒で都内のIT企業に就職し、クラウドファンディングサービスの立ち上げや電子書籍サービスのプロデュース、ブログサービスとそのサービスの成長をプロデュースする業務に携わってきました。
その後は独立してインターネットの広告代理店を立ち上げ、これまで長くインターネットに関わる仕事をしてきました。

IT業界というのはものすごく成長が速いんです。
1年間で2~3倍という速さで事業規模を拡大していくのでスピード感を出しやすい分、このサービスが長く続くか、事業がこれからも残っていくかというと、なかなか難しいのが現実です。

いつか無くなるかもしれないものではなく、この先もずっと残る会社やブランドを作りたいと徐々に考えるようになり、どんな時代でも必ず人間が必要とするものの代表的なものが「衣食住」だなと。
これまでのITの知識を活用しながら事業として回していける分野として“スイーツ”がベストだという答えに行き着きました。

ちょうどその頃から中小規模なM&A(*2)が出てきたタイミングだったのでM&Aをしようと思い、“スイーツ”というドメイン(*3)の中で希望に合う会社を探し、酒田に辿り着きました。
実はそれまで東北に行ったこともなくたまたま「酒田」だったわけですが、結果として酒田で本当に良かったと思います。


IT企業勤務時代の内橋さん

1つ目に、初めてこの店の商品を食べたとき、都内で売られている商品と全く遜色のないクオリティーに驚きました。
かつ、「IT知識を活かす=EC(*4)を伸ばす」ことを考えると「酒田で作られている」ことは1つの強みになると確信しました。
庄内にはあちこちに湧水があり、地元の方は当たり前のように汲んで使っています。
私は大阪出身・都内在住ですが、そんな天然資源がすぐそばにあって簡単に手に入るということはないですし、本当に衝撃的でした!
やはり豊富な天然資源と特産物というのは地元以外の人間から見るとすごく魅力的で、お客様の場所が変わると酒田の食材を使っているというのは価値を持つと考えたんです。
酒田は海、山、平野があり、水も良く作物の品質も高い。
一見、当たり前のように思うかもしれませんが、都市部や天然資源に恵まれない地域からするとすごく価値があることです。

2つ目に、米粉=グルテンフリー(*5)という点です。
東京青山などでもグルテンフリーの店が少しずつ出始めている状況でしたので、小麦アレルギーの方はもちろん、食意識の高い方にも支持してもらえると考えました。
当時は“グルテンフリー”という打ち出しも全くしておらずまだまだ改善の余地があると思い、買収に踏み切りました。
商品自体はほぼ変わっていませんが、EC販売に適した焼き菓子を中心に少ない種類でも成り立つよう半数近くまで減らしました。
一方で、ただ減らすだけでなく商品開発には今まで以上に力を入れています。
当社は基本的に庄内産、山形産のものを使用するというブランドコンセプトのもと、その中できちんとお菓子として仕上げられる特産品がない場合は無理には作らないことにしています。
例えば、ラ・フランスを使用した商品は、使用しているラ・フランスも刈屋(酒田市)の農家の方が育てたものです。
どんな農家で何を作っているか、その農家で作っているラ・フランスにはどのような特徴があるかということも一緒にお客様にアピールしています。


庄内産「はえぬき」を使用したグルテンフリーの菓子が並ぶ


庄内平野と鳥海山

「働きたいまち」を実現するには?

「働きたいまち」を考えるのであれば「住みたいまち」を大前提として考えないといけないと思います。
もちろん、働くことだけが生活ではないので、働く以外の時間の充実もそこに住む理由の一つだと思います。

東京を例にとると、趣味仲間と集まりたい、好きなアーティストのライブを見たい、話題のスイーツすぐ食べに行きたいといった欲求がすぐに満たせるし人を惹きつける吸引力があります。
私も新卒で上京し、周りには地方から上京している方もたくさんいましたが良い労働環境や良い仕事があるだけではその土地にとどまる(またはUターンする)ことはほぼないと思っています。


“働くこと”に焦点を当てると酒田市の施政方針としてIT企業の集積がありますが、若者や女性が働きたいと思う環境を作るためにITを集積するだけでなく、転職してスキルを高めていける環境も必要です。
IT業界にいるとよく耳にする言葉に「メンター(*6)」というものがありますが、例えばWebデザイナーであれば目標とするようなスキルのあるWebデザイナーが近くにいるとか、ベンチマーキング(*7)ができる人材がいるということはすごく重要なことです。
特殊技術を持った若者や女性にとっての“働きたい” “働きやすいまちの実現”のためには、点(IT企業の集積)でなく面(スキルを高めていける環境)で作っていく必要があります。

ただ、大都市圏と同じ土俵で勝負するのではなく、酒田の地の利を生かした労働市場や働きやすいまちを目指すべきです。
例を挙げると「天然資源や農業×IT」のスタートアップ事業等の集積。
ビニールハウスの温度管理をAIで行う会社もありますし、そういった企業を集積して酒田でキャリアを積むとその分野にはめちゃくちゃ強くなる。
そうやって差別化することで外からも人が来るし、その方がいいと思います。
酒田で生まれ育った人にとっては東京の華やかな生活が、東京の人にとっては地方の自然や天然資源が魅力的に映ると思いますし、隣の芝生が青く見えるのは仕方がないと思います。

私がずっと感じていることは、酒田と東京はとても近いということ。
空港が2つある県はとても珍しく、庄内―羽田は飛行時間が国内路線の中で最も短くて1時間で行くことができます。
これは都内から草津温泉に行くよりも遥かに短い時間です。(東京―草津温泉は約3時間)

酒田に住みつつ週末東京に遊びに行くことも容易にできますし、酒田以外の人が両拠点で働くことも可能です。
そうなると航空券代金がネックになりますが、地域活性化という観点からも航空券購入の補助など移動の垣根を極端に少なくする施策があればぜひ私もそういう使い方をしたいですね!

また、酒田は天然資源だけでなく酒田舞娘、黒森歌舞伎など伝統芸能(文化)もすぐそばにあるので、日本人だけでなくインバウンドの呼び込みにもアクセスの良さをもっとPRし活用すべきだと思います。


酒田市の女性活躍に関して

キーとなるのは「柔軟な働き方」です。

私も子育て中ですのでよく分かりますが、子どもの体調不良や幼稚園・学校への送迎など子どもの事情で勤務状況が左右されたり、急に予定を変更せざるを得ない状況があります。
当社にはシングルマザー(以下、シンママ)が2名在籍していますが、その負担のほとんどが母親に行くわけですから従来の働き方を強いる労働環境や、子どもの事情によって固定されてしまうような労働条件では互いにデメリットでしかなく、マイナスの結果しか生みません。

あくまでも例としてシンママを挙げましたが、それはシンママに限ったことではなく、子育て、介護以外にも「この日はどうしても自分の趣味に時間を割きたいから働きたくない」等々、皆それぞれ様々な事情や考え方があるので彼らの労働力をどう活かし、いかに働いてもらうかが重要だと考えています。
「異論は認めない!」という凝り固まったやり方では、今後ますます深刻化する人材不足という状況下で働き手が働きやすいと感じることはありません。
もっとカジュアルに働き方を変えられたらいいんじゃないかなと思いますね。


都内某所にて

これからの展望

酒田にしかない資源をうまく活かして、オンリーワンの市になることが大切だと思います。
人口減少、とりわけ生産年齢人口がより加速度的に減っているので、消費もどんどん減っていくことが予想されます。
そうなると小さな商圏だけでの経済活動では先細りの一途を辿ってしまいます。
酒田には米をはじめ良いものたくさんありますし、色々なことができると思うんです。

売る場所が変われば価値もついてくるので、外に出す、もしくは外から呼んで人口減少を最小限に食い止めつつ、人口が減っても経済が成り立つよう県外との垣根をどんどんなくしていくことが必要だと思います。

私自身が酒田に魅力を感じたように、もっと多くの人に酒田を知ってもらいたいですし、経営者としても時代の変化やニーズに合わせ、より働きやすい環境となるようこれからも努めていきます。


 

*1 OEM…Original Equipment Manufacturingまたは Original Equipment Manufacturerの略で、他社のブランドの製品を生産すること、または生産するメーカのこと。
*2 M&A…Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、企業の合併買収のこと。
*3 事業を展開する領域のこと。
*4 EC…Electronic Commerceの略、電子商取引。ネット通販などインターネットを介してモノやサービスの売買、契約すること。
*5 グルテンフリー…グルテンを含む食品を摂取しないようにするライフスタイルのこと。小麦粉に水を加えてこねることでグルテンが生じる。
*6 メンター…「指導者」「助言者」を意味し、経験や知識を持つ人が他の人の成長や学びを支援する役割を担う。
*7 ベンチマーキング…企業等が製品、サービス、プロセス、慣行を継続的に測定し、優れた競合他社やその他の優良企業のパフォーマンスと比較・分析する活動のこと。


【カムコミュニケーションズ株式会社が活用した奨励金交付制度はこちら】
酒田市は女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定、女性管理職登用、男性の育児休業等取得した市内事業所に対し、奨励金を交付しています。
https://www.city.sakata.lg.jp/shisei/shisakukeikaku/chiikisouseibu/joseiouenportal/R3syourei.html

【女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定についてはこちら】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html






カムコミュニケーションズ株式会社

住所
酒田市東泉町4-11-6
電話
0234-28-8333
創業
2011年9月
従業員数
7名(うち女性5名)
事業内容
食品・菓子の製造・販売、食品のウェブマーケティング